ヨーガ・スートラ1-42

【有尋定】

[1-42] 定のうちで、言葉と、その示す客体と、それに関する観念とを区別する分別知が混じているものは有尋定とよばれる。

In conjunction with word and object knowledge, or imagination, this state is savitarka samapatti. ||42||

 

<解説>①有尋定(savitarka-samapatti=サビタルカサマーパッティ)はいちばん初歩的な段階の定で、心のあらいはたらきが残っている。このことをいまの経文では、語と対象と観念とを区別する分別知が混じているもの、と定義したのである。分別知(vikalpa=ヴィカルパ)についてはすでに経文1-9が定義を下しているが、ここでは、一つの事柄について、それを表現する語と、その語によって示される客体と、それの観念とを区別する知識であると定義されている。真知は語、客体、観念の三者の未分の上に成り立つ無分別知でなければならない。区別される三者のどれもが実体を対象としない言語上の知にすぎない。次の無尋定の定義と比較すればわかるように、有尋定は未だ主客の対立を存する定心の段階なのである。この定義は仏教の分別知の定義にやや近い。1-17参照。