ヨーガ・スートラ2-10

【煩悩の除去】

[2-10] これら五つの煩悩は、それらが潜在、未発の微妙な形態で存在する時には、心の逆転変によってはじめて除去することができる。

This burden (klesha) should be nipped in the bud. ||10||

 

<解説>①煩悩は如何にして除去することができるか?この大切な問題に本経文と次の経文とがささげられている。煩悩には二つの在り方がある。一つはいわば原因としての在り方で、煩悩が、前に述べた行すなわち潜在意識的な形で存在すること、これをここでは微妙な形態(suksma=スークスマ)とよんでいる。もう一つの在り方は顕在意識上に、心理的なはたらきとして現われた、いわばあらい形で存在することで、これらの除去法については次の経文が答える。

 

<解説>②心の逆転変(prati-prasava)というのは、心がこれまでとは逆の方向に転変することである。すでに述べたように(1-51註)、心は元来、真我の経験享受と解脱とを目的としていろいろな心理器官とそのはたらきを転変(展開)してきたのであるから、ヨーガの修行によって、真我が自らの実相を知るならば、心の任務は完了したことになる。そこで為すべき任務を終わった心はその転変を今までとは逆の方向へ向けかえる。つまり、今まで転変したいろいろな形の煩悩の行をだんだんに消していって、心の本源である自性の中へ没入してゆくのである(laya)。これが逆転変といわれるものなのである。微妙な形で残っている煩悩はこの逆転変によってはじめて除去され得る。そうして、解脱とか独存とかいわれる状態がくるのである。逆転変は還元、退行、還滅の意味をもっているともいえよう。