ヨーガ・スートラ2-35

〔戒行実践の成果〕

[2-35] 非暴力の戒行に徹したならば、その人のそばでは、すべてのものが敵意を捨てる。

Once a condition of durable non-violence (ahimsa) has been established, all enmity will be abandoned in yourenvirons. ||35||   

 

<解説>非暴力の戒行に徹する(ahimsa-pratistha)という語の原語は、「非暴力の基礎の上では」とか「非暴力の基礎の上に立つ時には」と訳することもデキル。ハウエル氏はこの基盤(pratistha)という語を「神秘的な根本力」(mystische Grund-kraft)と訳し、これを超心理的(metapsychisch)、超物理的(metaphysikalisch)な実在と見なす。それは心の深層にいつも存立するもので、あらゆる経験的現象と生命活動はそれから生まれる。だから、例えば生命尊重の念は心の底に基盤をもっている。それは言わば、生きものに生まれながらにしてそなわっている秩序維持の力といってよい。戒に徹することは、このわれわれの実存の深みから出る創造的な衝動に徹底的に身をゆだねることである。それによって、非暴力の神秘的基盤が心の奥底に実現される(bhavana)から、行者が生命に対する畏敬の念をいかなる場合でも失わないだけでなく、彼が居るというだけで、いかなる敵意も障害欲も消えてしまうような雰囲気がそこにできあがるのである。このようにハウエル氏は解釈している。たしかにインド的考え方に触れたものがある。